Star Trek: New Voyages

「スター トレック:ニュー ヴォエジズ」が創られるまで

1966年にアメリカで始まったテレビシリーズ “Star Trek” (邦題:宇宙大作戦)は当初5年間の放送を想定していましたが、様々な理由から3年間で打ちきられてしまいました。スター トレック:ニュー ヴォエジズは番組打ち切りのために日の目を見ることができなかった4年目以降のエピソードをアマチュアであるファンが自ら制作し、インターネット上で無償公開しているシリーズです。

制作者のJames Cawleyは、エルビス・プレスリーの物まねを職業としています。彼は趣味でエンタープライズのブリッジを造り始めましたが、セットは次第に本格的になり,そこで作った操舵士の動くスコープはTV「エンタープライズ(「暗黒の地球帝国」 In a Mirror, Darkly )」で使われたほどの出来栄えです。オリジナル俳優が多数出演したことで話題のアマチュア作品 “Star Trek: Of Gods and Men” でもブリッジがまるごと使われています。 

Cawleyはこのセットを使って、自分がカークを演じる新シリーズを制作し始めたというわけです。アマチュアといえども俳優を変更した第4シーズン、というスタンスで大まじめに撮影されています。最初の頃は俳優が違うことや素人臭さの残る演技のため違和感があるものの、脚本家や俳優にテレビシリーズからゲストを迎え、ますます作品のレベルがアップしてきています。

パイロット版の制作は2004年で、当初は”Star Trek: New Voyages” を名乗っていましたが、2008年2月から “Star Trek: Phase II” へ名称変更されました。”Phase II” とは1970年代に企画された “Star Trek” の続編、新テレビシリーズのタイトルでしたが、この企画は実現せず映画版スター・トレック(”Star Trek: The Motion Picture)へと姿を変えました。2015年6月9日になって、”Phase II”の呼称を捨て、再び”Star Trek: New Voyages”に戻す事が発表され現在に至っています。

今回のニュー ヴォエジズではテレビシリーズから映画版へのつながりも描写する意気込みで、オリジナルキャラクターやテレビシリーズ “Star Trek: Phase II” からのキャラクターを加え、スポックを始めとした主要俳優の入れ替えも行い、さらなる飛躍を目指しています。2012年6月撮影分(エピソード10)からは、パイロット版からずっとカークを演じてきたCawleyからプロの若手俳優Brian Grossにカーク役がバトンタッチされました。Cawleyは引き続きシニア・エグゼクティブ・プロデューサーとして残り、ニュー ヴォエジズ製作全般においてサポートを続けます。

ニュー ヴォエジズの製作チームは、2011年にドイツで開催されたFedCon XX 2011のためのスペシャル映像も製作しています。

著作権に関して

俳優の演技力はともかく、作品の質という点では、プロや学生の参加もあり特殊効果などに3DCGを多用することで作品世界に広がりを持たせ、オリジナルのテレビシリーズよりも高い品質を誇っています。スター トレック:ニュー ヴォエジズでは俳優はノーギャラで出演、作品も無償公開とし、関連商品などを販売したりして利益を生むことが無いようにすることを条件に著作権者であるパラマウント社、CBS社との間に取り決めがあり、”Star Trek” やエンタープライズ号、オリジナルと同じキャラクターを使用して作品を作ることは事実上黙認されているようです。スタートレック:ニュー ヴォエジズ以外にも多くのアマチュアシリーズが存在していますが、前述の条件をクリアすることで今までは問題なく作品が作り続けられていました。

ファンフィルム ガイドライン

2016年6月23日、CBS社はスタートレックのファンフィルムを作る条件として、ファンフィルムガイドラインを発表しました。このガイドラインに記載されている条件によって、ニュー ヴォエジズの新しいエピソードは制作できなくなりました。以下の条件がニュー ヴォエジズの継続を阻む条項です。

1. ファンの制作は、1つの自己完結型ストーリーの場合は15分未満、2つ以上のセグメント、エピソード、またはパートは合計30分を超えてはならず、追加のシーズン、エピソード、パート、続編またはリメイクも制作してはならない。

ほとんどのエピソードは約1時間であり、一連のエピソードであるため、この条件下では新しいエピソードを制作することができません。以前は短編を作っていましたが、ニュー ヴォエジズは1960年代に作られたオリジナルシリーズの新しいエピソードでした。 

5. ファンの制作は本当の “ファン”制作でなければならない。つまり、クリエイター、俳優、その他の参加者はアマチュアでなければならず、参加に対して報酬を受け取ってはならず、現在または過去において、如何なるスタートレックシリーズ、映画、DVD制作、または、CBS社またはパラマウントピクチャーズのライセンシーで雇用されていた者を含んではならない。

ニュー ヴォエジズ製作チームのキャストやクルーの何人かは、ある時点でスタートレックシリーズや映画などと関係していました。(例えば、James Cawleyは新スタートレック シリーズ1のコスチューム部門で働き、後に最初のJ. J. エイブラムズのスタートレック映画でカメオ出演しました。)ニュー ヴォエジズ製作チームが残りのエピソードを制作することが許されないことを意味します。これには視覚効果チームも含まれます。

今後のニュー ヴォエジズ

  • ニュー ヴォエジズ製作チームは、今後如何なる新エピソードも制作しません。 
  • 「運命の苦悩」、「パンと野蛮」、「原点:長引かせた男」は制作中であり、まだ多くのポストプロダクション作業が必要です。
  • キックスターターなどを経由してニュー ヴォエジズに寄付した方は、、少なくとも「運命の苦悩」の制作が完了したら視聴が許可されます。 
  • 他の2つのエピソードが公開されることは短期間の内には無く、まだ確定されていません。 
  • 米国に本拠を置くwww.startreknewvoyages.comのウェブサイトは永久に閉鎖され、www.stnv.deが公式ウェブサイトになりました。
  • ニュー ヴォエジズの撮影セットとチームは現在、Star Trek: Original Series Set Tourに取り組んでいます。