かつて、STファン.comに掲載された山口智子さんの過去記事を、丹羽正之氏に許可を得た上で再構成したものを公開しています。


★ ジョージ・タケイさん 同行記 ★


7月8日(木)


そうなんです! ジョージ武井さんにお目に掛かれたのです。
興奮は、既に先週木曜の午後、成田空港で始まっていました。


今回のアテンドを担当されたS氏とK女史と一緒にお出迎え口で待機していた時のことです。
S氏の掲げる白い紙に並ぶのは、


 Welcome!
 Mr. George Takei


の文字。


ぱっと見てすっと行く人あり、ん?と気付いてじーっと見る人あり・・・
中には、「Oh! Is he...?」と言いながらS氏の顔をのぞき込む人も。
こたえは勿論、「Yes, he is!」です。『...』が誰であろうが構うものですか! 状態・・・(^_^;(笑)。


一番見事に反応してくれたのは、ヨーロッパ系某社のパイロットの方でした。
さすが同業者! 「Mr. George Takei」の文字を目にするなり、「George Takei? Mr. Sulu?」と言いながら、まっすぐこちらへ近づいて来られたのです。
その声は、同時に「信じられない! それはすごい!」と聞こえました。


とにかく大喜びのパイロット氏は、追い付いてきた同僚の皆さんを片っ端からつかまえて、 「ほら、あれ! George Takeiが来てるんだそうだ! そうそう、スタートレックの! ミスター・スールーだよ ほら! だから、パイロットなんだ〜!」と(^^)。
『パイロット』の部分に ひと際熱がこもっていたようです。


そうして待つこと1時間あまり・・・
出口がふわっと明るくなったような気がしたところに、ジョージさんが姿を現されました。
寛いだ格好なのに、なんともカッコイイのです!
姿勢の良さはピカイチなのに、どこにも無理が無いのです。やっぱりスターなんです。
長旅の疲れなど一切見当たりませんでした。SさんもKさんもσ(^^;も、嬉しさのあまりしばらくは声も出ませんでした。


移動の車中、会話の中心は常にジョージさんでした。
道路沿いに見える建物や、世の中の動き、参院選、大統領選、そして勿論スタートレック! 豊富な話題、類い稀なユーモアのセンス・・・
ジョージさんは、素晴らしい話し手であると同時に、熟練の聞き手でもあるのです。
初対面のS氏もK女史も、その会話を心から楽しんでいらしたと思います。


ホテルでお出迎えのパラマウントHEJ社のTさんYさんと合流後、翌日からの取材・イベントの打ち合わせが始まりました。
ジョージさんは参加されず、マネージャーのブラッドさんとのミーティングでした。


この時、『ハリウッド・スターのマネージャー』ということで、構えがなかったと言えば嘘になります。
『芸能人およびその関係者』については、通訳者仲間から聞かされた色々なエピソードがあり、心配だったのです。
でも、ブラッドさんは、長年ジョージさんと共に仕事をして来られた穏やかで人間味豊かな好人物でした。


印象的だったのは、ジョージさんがインタビューでは英語で話すか、それとも日本語で話すかについてのブラッドさんのこたえです。


「ジョージは心から話すから」


日本語で話すか、英語で話すかはジョージさんの判断によるというこたえであった訳ですが、ブラッドさんのジョージさんに対する深い信頼を感じました。


ジョージさんが、母語である英語の方が伝えられると考えれば英語だし、日本語を母語とする取材陣には日本語で伝えたいと考えるかも知れないが、いつだって彼は心から話すから、言葉は後からついてくる、と言われたのだと思います。
普段言葉に翻弄され通しの私にとっては、目の覚めるようなこたえでした。


実際のインタビューが何語で行われたかというと・・・
ジョージさんは、二日間、ほとんどずっと日本語でした。
そして常に、誠心誠意を貫かれました。
単語単位で思い出せない時だけが、私の仕事であったと言ってもいいくらいです。
インタビューに同席して、改めてブラッドさんのこたえに納得しました。


ミーティングの後は、パラマウントさんご招待の夕食会。
ジョージさんを中心に、スタートレックのこと、DVDのこと、東京ローズのこと、翌日から始まる取材のこと等々・・・
話に花が咲き、あっという間に時間が経ってしまいました。


そこでの会話をちょこっと‥ ご紹介します(^^)。
(このときは英語でした)


 ジョージ: ブラッドは日本語喋らないからなぁ

 ブラッド: (食事中。ちょっとデータ風)

 ジョージ: 今回、日本語能力を、せめて10%は向上させて貰わないといけないな。

 ブラッド: (データが首をかしげるようなしぐさ付きで) ん? そんなの簡単だよ。

 ジョージ: ほう・・・

 ブラッド: 10%でしょ?

 ジョージ: ああ、そうだ。

 ブラッド: 単語を1つ覚えればいい。10の10%は1だもの。

 一 同 : (笑)


ブラッドさんがブレント・スパイナーさん似という訳ではないのですが、 雰囲気というか、口調というか・・・ どこかデータを思わせるところがあるのです。



7月9日(金)


紺のジャケットがビシっときまったジョージさんの姿勢は抜群で、とても恰好良かったです!
黒のスーツのブラッドさんは、MIBのようでした。
それで、「サングラスと記憶消去ライト(!?)はどこ?」との質問が飛んでいました。(σ(^^;も‥ 飛ばしました(^^;)


インタビューは、港区のパラマウントHEJ本社。
会議室が2つ用意され、その2つをジョージさんが往復するかたちで進行。
この日だけで、20社近い取材がありました。


余談になりますが、インタビュー会場として使用された会議室の名前がなんと“ボーグ・キューブ”だったのです!
パラマウントHEJ社を探すと、優秀な元ドローンに会えるかも知れません。


そして、控室にはジョージさんのサイン本『Captain's Daughter』がさりげなく飾られていました。
ジョージさんは、「誰が置いてくれたのでしょう?」と言いながら、とても嬉しそうでした。
同書は、スールーがいつの間に、どういう経緯でデモラの父親になったのかを教えてくれるTOSのオリジナル小説です。
ジョージさんも、その本を読んで初めて! スールーの過去が分かったそうです。(^^)


更に余談になりますが、『Captain's Daughter』では、チェコフとスールーの友情、スールーの娘デモラに向けられるチェコフの温かい眼差しが描かれています。
どうやら、チェコフ役のウォルターさんとジョージさんの友情も、長く続いてきたとても温かいもののようです。
小説とは逆に、ウォルターが娘を持つ父親で、ジョージはそのお嬢さんの成長を楽しみにしている・・・ 様子です。


インタビューは、粛々と、且つ熱く進行していきました。


インタビュー当日のスケジュールは分刻みで組まれていましたから、時間的な余裕はありませんでした。
それでも、決して慌てることなく取材を続ける記者、ライター、カメラマン‥ 質問に、あくまで真摯にこたえて行くジョージさん‥ 時計片手にスケジュールを管理するパラマウントHEJ社スタッフ‥ 誰かの集中力が欠けていたら、粛々とはいかなかったでしょう。


では熱くとは? ・・・これはもー、簡単です! 取材陣のほとんどが、ジョージさんの、そしてスタートレックの大ファンだったということです。
お一人ずつ捉まえて確認したわけではありませんが、同じファンですもの! それは分かります。ジョージさんに会えて、嬉しくて仕方ないのです。
でも、だからといって、ファンの顔になってしまうかというと・・・ そこはプロ! 嬉しさをぐっと胆に溜めて、表情はあくまで平静に、インタビューが進むのです。だから熱いんです!
#ファンじゃない記者は? ・・・インタビューが終わるまでには、すっかりジョージさんのファンでした(^o^)ゞ。


その意味では、私自身ファンの顔になってしまうかどうか‥ あやうい瞬間がやってきました。岸川 靖さんと大川 透さんが、カメラマン他、担当の皆さんと一緒に取材にいらしたのです!


ヒカル・スールー艦長が、エリムと、いへ仕立屋ガラックと目の前に立って握手しているんです!
フラッシュがどんどんたかれて、笑顔で進む写真撮影・・・ その時皆さん言葉少なだったのが、私にとっては幸いでした。かなり図々しく、見とれてしまっていましたので(#^^#;。


取材は、岸川さんから始まりました。初対面ではないためか、その質問の深いこと! お二人の英語のやり取りを訳しながら、固有名詞などに苦慮していると、すかさず日本語で説明が飛んでくるのです。
なので、今度はそれをジョージさんに向かって英語に訳す・・・ と、ジョージさんと岸川さんのやり取りが再開する・・・ の繰り返しでした。
インタビュー後のジョージさんの第一声は、「すごい知識だ!」(原語:How knowledgeable! 知識豊富で聡明で‥)。
ジョージさんの説明を聞いたブラッドさんの目も真ん丸になってました。


大川さんは、開始前にハンドタオルを新しくして取材に臨まれました。
しずかに戦闘態勢に入られたような、隣りに座っていなければ気付かないような極めてさりげない動作でしたが、舞台袖で出番を待つ大川さんを思い浮かべてしまいました。
小さな小さな光の玉が、大川さんのこめかみをつっと降りていきました。


このお二人の取材の中身! これはもー、ずぇ〜んぶ喋ってしまいたいのは山々ですが、それを私がやったらば、尾ひれはつくは、感想は混ざるは、もー、とんでもないことになるのは火を見るよりも明らかなこと。詳しくは各誌をご参照くださいませ。


ここでは楽屋話をちょっとだけ・・・
取材前、インタビュアーや媒体についての確認中に『大川さんはアクターだ!』と分かったときのことです。


 ブラッド: ちょっと待った! 彼は、アクターなの?

 山口 : そうです。つい先日舞台を拝見したばかりで・・・

 ブラッド: それは大変だ!

 ジョージ: (ひたすら目くりくり、顔にこにこ)

 山口 : スタートレックでは、仕立屋ガラックです。スタートレックもお好きで・・・

 ブラッド: ますます困った。

 ジョージ: (目くりくりで)『アクターになったきっかけは?』

 ブラッド: ほらね(困った笑顔)。ジョージは一流のインタビュアーでもあるから。相手がアクターだなんて、余計にまずい。
      ジョージが質問にまわったら、彼はこたえるばっかりで、インタビューにならなくなっちゃう。

 ジョージ: (目くりくり、顔にこにこ) 危険だな。


お二人の真剣な打ち合わせが続きました。(^_^;。


それにしても、ジョージさんがインタビュアーとしても一流であるというのは大いに説得力のあるひと言でした。
ニュースショウのホストとして、長い間インタビューする側に立たれた経験の大きさでしょうか。
インタビューに応じるジョージさんは常に真剣勝負。そしてとにかく活き活きと、心から話されます。
それは、インタビュアーの気持ちが分かるからでもあったのですね。



7月10日(土)


この日は午前中が取材、午後がスタートレック東京駅イベントのグランドオープニングセレモニー出席でした。


二日目を迎えても、彼の情熱は衰えることがありませんでした。フェイザーガンを手にした時など、キャプテン・スールーそのものの精悍な表情で、ポーズもとてもキマっていました。


データとバークレーをミキサーにかけて、データ寄りにしたようなブラッドさんは、「どうも有り難うございます(^^)」の応用編、「どうも」を日本人と区別がつかない位自然に駆使。スタッフの皆さんとの息もぴったりでした。


この日は、パラマウントHEJ社の撮影も組み込まれ、前日温かく歓迎されていたジョージさんは心底楽しんでいるようでした。
実は、PHEJ社には熱烈なSTファンが居られます。そのお陰か、色々な制約に縛られながらも今度のTOSボックスの冊子 by 岸川さん など嬉しい日本だけ企画を通してくれるのは、有難いことです。


グランドオープニングの司会は、STファンにして多才なタレントのヴォイジャー佐藤さん。衣装は勿論制服(24世紀仕様)で、会場の空気はどんどん熱を帯びていきました。


一方、ステージ裏では・・・ 船底靴をハイヒールに替えようとする私に、それは足のために良くない! 女性が履く靴をデザインするのは男性で、履く人のことが分かっていない! と・・・ 真剣なジョージさんでした。
#脚を少しでも補正したい一心で、山口はヒールを履いてしまいました(^^;。
#デモ、後で気付いたのですけれど、会場には丹羽さんのお宅にも出没したセブン人形ガ!(^o^; これこそまさに儚い抵抗は無意味っす(涙)。


ジョージさんのオープニングスピーチは流石。
詳しい内容は皆さんが報告して居られますので、ここでは個人的なことを書かせてください。


前にも触れましたが、彼には通訳者はほとんど必要ないのです。それは東京駅イベントでも変わりませんでした。
それなのに! そんな私にスピーチの最後にお礼を仰ったのです。モーびっくり! 膝が震えました。
今回メイクを担当されたMさんも、周りに対して彼ほど温かい気遣いを見せる人はいないと言われていました。
きらびやかな世界の人とありったけ仕事をして来た人物の一言ですから説得力があります。


ジョージ武井さんは、シャトナーに対する辛口のコメントから選挙で誰をなぜ応援するかまで、臆することなく発言します。
それ故に敵もいるかも知れませんが、私は今回好感を強めました。
一筋縄ではいかないユーモアのセンスや茶目っ気もさることながら、とにかく自分の信念を貫こうとする意志の強さがすごいです。
取り繕わず、見えないところでも貫くのです。
そういう人物ですから、彼が現在準備を進めているインディーズ映画の製作も必ず実り多いものとなるでしょう。 大戦中、謀略放送に携わった東京ローズの汚名を着せられたアイヴァ戸栗という女性を描くとのことです。



山口 智子(やまぐち さとこ)

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